ワンピース航海記録 | 漫画と映画の感想と考察

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推理短編小説「黒後家蜘蛛の会」 6人の男と1人の給仕によるミステリー

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 本はいくら読んでも良いものですが、時間に追われてなかなか出来ない人が、今のご時世はどうも多い気がします。というか、それ以前に活字自体に敬遠する人も少なくないような気が・・・。

 ならば短編小説はどうでしょうか。1話が短く、とっても読みやすいです。しかもその内容が引き込まれるような人間関係とミステリーが伴っていれば・・・。

 

 そこで、「黒後家蜘蛛の会」です。SF作家の巨頭であるアイザック・アシモフが書いたミステリーもの、その面白さは他の追随を許さないくらいおススメです。

 では、今回はこの作品について学んだこと、思ったことを書いていきます。

あらすじ

  弁護士、科学者、数学者、作家、画家、暗号専門家の6人が月に1回集まって、晩餐会を開く「ブラック・ウィドワーズ(黒後家蜘蛛の会)」。独自のルールとして、女人禁制、部屋で話したことは外で話してはならない、といったものがあります。(後者は守られていない気がするが・・・)

 そして6人の中から1人ホストを決め、招かれたゲストも参加し、会話に花を咲かせていますが、その過程で謎に突き当たり、6人+ゲストで解明するために考えるものの結論には至りません。

 そんな中、いつも謎の真相を突き止めるのは、給仕のヘンリーでありました。

魅力について

 「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」というミステリー小説誌で断続的に発表された作品です。

 魅力はなんと言っても、「ミステリーの内容」「メンバーの個性」です。

視点外の謎解き

 推理ものなので、やはり注目したいのは謎解き。昨今の推理ものと比べると、かなり特徴的な形となっています。

 というのも、この作品では、伝聞や会話で謎が展開されるため、現場ではなく、あくまで他者の話から推理するものなっています。相手の話を聞き、質問し、そこから考える・・・視覚に訴えるものは数少なく、あくまで舞台は彼らが集まって食事をする場で謎解きを行うのです。

 

 そのため思考の隙間を狙ったようなトリックが多く、「ああ、こういう考えもあったか!」と思わず手を叩くようなものが多いです。

 私としては推理ものにおいてこの手の考え方が大好物です。装置を使ったトリックだと、どうにでもなってしまいそうな気がするので・・・。だから時おり、コナンとかはときどき消化不良に感じることがあります。

日常的謎解き

  前述したように、謎解きの場はブラック・ウィドワーズの食事会です。またメンバーも警察や探偵ではないため、日常的な謎を題材にすることがほとんどです。それが大きな題材に繋がることはありますが、思わせる程度ですし、殺人なども現場に立ち会うわけではありません。

 小さい窃盗やちょっとしたカンニング、探し物の在りかなど、他のミステリーものと比べると、より日常的な謎となっています。

 殺人描写などで推理ものを敬遠している人にも、おススメできます。

 

「われわれがどこで間違うかっていうと、むずかしく考えすぎるからなんだ」

 画家のゴンザロのセリフです。何気にこのセリフが当てはまるような謎解きが多い気がします。(言っても、最低限の知識は欲しいですが)

個性的なメンバー

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 そしてこの本を読むにあたって、忘れてはならないのが登場人物。私がこの物語に惹かれたのは、謎解き以上に特徴的なメンバーです。ヘンリー以外のメンバーやこの会自体にモデルがいるのもミソ。

 

・弁護士 ジェフリー・アヴァロン

・科学者 ジェイムズ・ドレイク

・数学者 ロジャー・ホルステッド

・作家 イマニュエル・ルービン

・画家 マリオ・ゴンザロ

・暗号専門家 トーマス・トランブル

・給仕 ヘンリー

 

 会話や謎解きにそれぞれの個性がよく出ており、キャラの魅力がよく立っていました。ちなみに私は特にドレイクとホルステッドが好きです。

互いに尊敬を忘れないメンバーたち

 前述したように私がこの本を読んで、特に面白さを感じたのは6人とヘンリーの関係性。

 6人を愛し、常に謙虚で、もてなしを行うヘンリーに対して、知識人であり、社会的評価も高い6人も、謎解きをする彼を素直に称賛、尊敬する・・・こんな関係にものすごく憧れます。

 

「皆さまが謎を解明なさるのです。わたくしはただ、落穂拾いをいたすだけでございます」

 1巻の「何国代表?」から、謎解き後のヘンリーのセリフです。このセリフから、ヘンリーがこの会のメンバーを愛しているのがわかります。

 そして、自尊心が高いメンバーが素直にヘンリーを称賛できるのは、ヘンリーがこの趣旨を彼らに示し、敬意を抱いているからだと思えます。

 

 加えて、6人もなんだかんだで互いに尊敬を抱いているのが素晴らしいです。

 食前の会話や推理の過程で互いにののしったり、自分勝手な考えを披露したりはするのですが、なんだかんだで皮肉を言いあえたり、会のルールで皆が「ドクター」の称号を持ち敬意を示すなどと、傍から見れば仲の良さがうかがえます。

 罵詈雑言はなかなか強烈ですが、ウィットに富んでいるのも面白い。

最後に

  このように謎と人物がとにかく魅力的なこの作品。

 知識人達が自らの知識を全開にして、説得力を持たせるような推理を展開、てんやわんやと言い合いに発展しつつ、ヘンリーが締める流れが本当に面白いです。

 

 正直、今回はおススメの話を挙げようかと思いましたが、これは本当に面白いので、ネタバレなどもナシでやりたかったため、このような形になりました。

 敢えて挙げるなら、1巻の「行け、小さき書物よ」が、作中で初めてメンバーが揃うので、印象的かつおススメです。

 

 「黒後家蜘蛛の会」皆さんもいかがでしょうか。ちょっとタイプの違う推理ものとしてはもちろん、特徴的な人物の掛け合いを読むだけでも面白いです。これを読んで、いろんな考え方を獲得してもいいでしょう。

 わりとマイナーもののため、通ぶりたい人にもおススメです。(ゲス顔)

 

 私もこれに登場する人物たちのように、もうちょっと実りのある会話ができるようになりたいですね。そしてこの質問に答えられるようになりたいのです。

「あなたは何をもってご自身の存在を正当となさいますか?」

 これの意味を知りたければ、読むんだ!